ベトナムの鉄道2018

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はじめに

 2018年8月、今回は北のハノイからホーチミンまで南下しました。前回夜通った所を昼に移動し車窓からの景色を堪能してきました。
また、目的であるニャチャンのラケットループ線を見てきました。その報告です。

1.今年変わったこと

(1)昨年なかったQRコードの読み取り機がハノイ駅とサイゴン駅で実際に稼働しているのを見かけました。
(2)昨年1月よりハノイ市内西方キムマーからイエンギアバスターミナルまでBRTが動き出していました。BRTといっても1車線をバス専用にしただけなので、違反ですが他の車やバイクも時々入ってきます。ただ停留所はホームになっていて改札口もあるので鉄道みたいです。
(3)そのBRTの終点イエンギアバスターミナルから市内鉄道の工事が進んでいました。今年中に開業する予定なのですが遅れているように見えます。
BRT 2018.08.22 BRT、ホームから
工事中 2018.08.22 工事中の市内鉄道、手前はBRTの駅

2.今回乗車区間、切符の購入

  • (1)ハノイ-ニャチャン、  ソフト座席
  • (2)ニャチャン-ホーチミン、ソフト座席
  •  (1)のハノイ-ニャチャンは乗車する前日にハノイ駅で買いました。ベッドかシートか聞かれたりしましたが紙を使わずに片言の英語で十分通じました。行くたびに英語が浸透しているような気がします。
    ハノイを出発するときはほぼ満席だったので長距離の切符なら早めに買う方がいいかもしれません。ソフト座席車は古い車両と電光案内板が付いている新しい車両があります。今回はニャチャンまでは古い車両、ニャチャンからは新しい車両でした。
    外の景色ですが、有名なハイヴァン峠以外にもVinhとDongHoiの間で2度峠を越えます。どちらも峠にトンネルはありませんが山を越える線路ですのでオメガループ線が見えたりします。峠を下ると川に沿った線路となりトンネルの連続になるのも楽しいです。
    また、この区間、貨物列車に補機は付いていないので急勾配ではなさそうです。補機はハイヴァン峠だけのようです。
    車内販売ですが、昼食と夕食が食券方式になっていました。食事の2時間ほど前に食券を売りに来ます。それとなくわかるので手で食べる身振りをすれば確認できます。
    (2)のニャチャンからホーチミンの切符も前日にニャチャンの駅で購入しました。ニャチャンも外国人が多い観光地なので紙を使わずに購入できました。ただ、列車に乗り慣れていない人は紙に書いてきちんと購入するのがいいと思います。
    この区間では車内が満席になることはなかったので直前でも購入できそうです。
    景色ですが、ダナン以北と比べると単調です。そのためかソフトシート車の車内にはモニターがあり、ドラマなどが上映されています。
    南下する場合はニャチャンのラケットループが最後の見どころでしょうか。

    ハノイ駅構内 2018.08.23 ハノイ駅構内
    食券 2018.08.23 夕食の食券
    夕食弁当 2018.08.23 夕食の弁当
    ソフト座席車 2018.08.23 ソフト座席車車内、モニター設置

    3.ニャチャンのラケットループ(balloon loop)

     ニャチャンには世界的にも珍しい本線のラケットループ線があります。ラケットループとは小田急藤沢駅のようなスイッチバックの駅で方向を変えずに駅を出発しループ線を通って再び駅を通り元来た方向に戻る線路です。
    機回しの手間は省けますが客車列車・貨物列車とも長く停まる駅なので機回しの時間は十分あるはずです。この駅で編成の向きを変えたくない理由があるのでしょうか。
    ニャチャンでは上り下りどちらの列車もまず駅に到着し、ラケットループを通り出発します。そのためループ線内は常に右回りです。
    ループ線を使うのは1日に20本程、とループ線内の踏切番の職員に教えて頂きました。特急列車が日に5往復なので貨物列車も5往復程、でしょうか。
    ループ線内にも距離標があったのでれっきとした本線です。
    また、ホーチミン-ニャチャン間の区間列車はループを通らずに機回しして折り返していきました。ループを通ると編成が逆になってしまうのでまずいのです。
    今回、駅からラケットループをすべて歩きました。この国では多くの人間やバイクが線路内や線路脇を通っています。
    線路脇で腰を下ろし休んでいたら声をかけられました。身振り手振りで「日本から列車を見に来た」と伝えると家からお茶を出していただきました。ベトナムの人は親切な方が多いです。
    YouTubeに踏切からと車窓かのらの動画2本を公開しています。「ラケットループ線」で検索してみてください。
    地図  ニャチャン駅付近の航空写真、GoogleEarthから転載
    ニャチャン構内 2018.08.24 ニャチャン駅構内、左がホーム、最右の線路がラケットループ合流点
    本線 2018.08.24 左ホーチミン、右ハノイ、貨物列車は場内信号で停車中
    寝台車 2018.08.24 ループ線内、左は1315.4kmの距離標

    おわりに

     この世界的にも珍しい営業列車がラケットループで方向を変えるのは観光資源にもなるような気がします。少なくとも鉄道ファンには一見の価値があります。
    ところで今回、現地の人にDieuTri駅からクイニョンまで支線が営業していると伺いました。次にベトナムに行くときはその支線に乗ってみたいと思いますがいつになるやら。
     今回のベトナム鉄道の旅でも多くの方に親切にして頂きました。ニャチャンの踏切番詰所では次に来る列車の時刻を教えて頂いたり、待っている間の椅子を用意して頂いたりしました。
    車内でも隣の人に声をかけられ車内販売のトウモロコシをご馳走になりました。感謝でいっぱいです。この場を借りてお礼申し上げます。
    そういえば日本でも50年ほど前は長距離列車に乗ると必ず隣の人に声をかけてもらい、食べ物を分けて頂きました。国中が貧しかったからでしょうか。
    この50年で物質的には豊かになった日本は引き換えに精神的な豊かさを失ったような気がします。

    4.2021年の夢は改軌(truck guage conversion)

     改軌は最高速度も風に対する安定性も高め将来性ある鉄道にします。
     改軌には多くの費用が掛かりますが、将来の発展を考えると検討の価値はあると思われます。最近ではロシアがサハリンの鉄道約800kmを1067mmから1520mmに改軌しました。参考になります。
     改軌と同時にハイヴァン峠には長いトンネルを掘り、現在の山越えの線路は放棄します。また、ニャチャン駅とダナン駅は移転し、スイッチバックを解消します。さらに将来は、ハノイ駅とサイゴン駅を高架または地下にして市内の踏切を解消する必要があるでしょう。これらが終われば近代的な鉄道となり、新幹線を作らなくても時速160km程は可能と思われます。また、貨物輸送も中国との流通が促進され経済効果も大きいいと思われます。
     改軌は困難も多いでしょうが、高架線や地下駅がない今のうちに実施すべきと思います。最低でもポルトガルのように新しく作る駅の軌道は改軌の準備工事をしておくことを勧めます。ベトナムは苦しい米国との戦争を乗り越えた歴史があります。その力があれば改軌も乗り切れると信じています。

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     メールアドレス: tetuisi2018@yahoo.co.jp

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